腰痛は介護士の職業病
介護職についている人のうち、半数以上は腰痛に悩んでいるかもしれません。
実際、介護現場には腰痛になりそうな仕事が山ほどあります。
中腰になってのオムツ交換や入浴介助もそのひとつでしょう。
また、介護職員の数が少ない夜勤などでは、ひとりでやらなければならない仕事も多いため腰への負担も相当なものになります。
腰への負担が重い業務は、介護職員二人以上で行うのが好ましいですが、人手不足の中、しかも、自分の腰痛が原因になっているとすれば、とても言い出せる状況ではないと思います。
このように腰痛持ちの人は、中腰の状態で力を入れると腰が抜けそうな痛みに襲われフリーズすることが頻繁にあるのです。
ふんばりがきかず、体に力が入らなくなり、その後は全く仕事にならないこともあるかもしれません。
腰痛は慢性化してしまうことがあります。
一度でも腰痛を発症してしまうと、今後もっと悪化する可能性は否定出来ません。
介護現場において腰を痛めやすい状況とは
介護は中腰になる場面が多いので、常にギックリ腰になるリスクがあると考えていいでしょう。
移乗や入浴介助は体重を受け止めなければならず、しかも落下の危険もあることから、介助する側も筋肉が硬くなります。
その緊張した状態で、急に力を入れると、腰に電気が走るような痛みに襲われることがあります。
入浴介助
中でも危険なのは、入浴介助をするときです。
入居者を浴槽へ移動させる際などに、かがんで体を支える必要があるため、腰に負担がかかりやすくなります。
腰痛は、中腰の姿勢から急に動きを変えようとするときが一番発生しやすいと思ってください。
移乗介助
ベッドから車いす、車いすから便器に移す際などが危険です。
入居者が「全介助」なのか、部分的に介助の「一部介助」なのかによって、腰への負担度は変わるので、軽い腰痛がある場合には、負担が少なくて済む仕事に変更してもらうなど、同僚との間で調整するといいでしょう。
トイレ介助
車椅子からトイレに移乗させるタイミングが最も腰に負担がかかります。
移乗させる際に相手の体を支える必要があるためです。
また、見逃しがちですが、ズボンの上げ下げなどで中腰になる場合も、実は腰に負荷がかかるので、注意が必要です。
体位交換
寝たきりで寝返りを打つことが難しい場合、床ずれ防止として、定期的に体位を変えてあげることが必要になりますが、この業務の際は、前傾姿勢や中腰になるため、腰に負荷がかかってしまいます。
おむつ交換
要介護度が進行してしまい、トイレに行けなくなった場合はおむつを使用しますが、この交換時も腰への負担が増します。
寝た状態の被介護者に対して行うため、前傾姿勢が続くため、実は腰痛になりやすいのです。
介護士の腰痛対策
もちろん、腰に負担のかからないような介護、介助方法もありますが、それでも腰痛を完全に予防することは困難だと言わざるを得ません。
このような状況を受け、最近では積極的にリフトを導入し介護職員の体に負担が掛からないよう職場を改善している介護施設もあります。
また、国の政策としてロボットの導入を積極的に推進しています。
今後、介護職員の腰痛は軽減されていくでしょうが、残念ながらまだまだ発展途上です。
腰痛は慢性化する恐れがあり、特に年を重ねると重症化する傾向があります。
そのため、腰を痛めている方が介護職を続けることはあまりお勧めできません。
更に悪化すれば、今度は自身が介護を必要することになるでしょう。
これでは本末転倒です。
もし、あまりに腰痛が重症化しているようであれば、デイサービスやデイケアや訪問介護事業所の正規介護職などに転職してもいいかもしれません。
入所型の施設よりは腰への負担が軽減されるでしょう(それでも入浴介助や着替えの介助はあります)。
介護腰痛体操・ストレッチ
もし介護現場において、腰の痛みを感じたら、この3つの解消法を実践してみてください。
腰痛体操
介護職の腰痛を甘く見てはいけません。
気付かないうちに疲労は蓄積しているので、朝起きたときと寝る前に、数分でもいいので、必ず身体を伸ばすだけのストレッチをしてください。
本格的な体操でなくても構いません。
簡単に腰を伸ばしたり、一般的なラジオ体操でもいいと思います。
腰の疲労が回復している感覚が掴め、気持ちのいいと思うものだけをまずは実践してみてください。
ただし、義務にしてしまうと長続きしなくなるので、朝起きたときと寝る前に、「ちょっとだけ身体を伸ばす」くらいの意識で軽く始めてみてください。
これだけでも寝付きが違いますし、溜まった筋肉の疲れを回復させることができます。
コルセット・ベルト
入浴や車いすへの移動は腰に負担がかかる仕事の代表的なものです。
またオムツ交換などからも、介護とは腰を使うことがこれほど多いのかと感じるのではないでしょうか。
そこで使って頂きたいのはコルセットです。
コルセットをすることで確実に腰が楽になります。
整形外科でオーダーメイドすると2万円以上しますが、ドラッグストアなどで売られているものであれば、1500円程度の安いものもあるので、最初はお試しで安いものを使ってみてもいいでしょう。
選ぶときのポイントは、「腰をしっかり支えるサポート力」「マジックテープなどで簡単に調節ができる」「つけ心地がいいものである」などを中心に選んでみてはいかがでしょうか。
その他にもコルセットの機能を持った矯正下着もあります。このようなものと併用するとより効果が出ると思われます。
休息
腰痛がひどい場合には、痛み止めを飲んでみてください。
一時的ではありますが痛みからは解放されるでしょう。
また、横になり、安静にすることも大切です。腰痛は筋肉の疲労であることが多いために、まずは炎症抑えるため安静にすることが大切なのです。
痛みが発生したなと思ったら、横になることをおすすめします。
痛みが軽減したら、少し動いてみましょう。
休憩を入れたことにより、少し状態は良くなっていると思います。
休憩により痛みが回復していれば、「腰が痛い・・・」と言いながら、介護を続けるよりも効率が上がるはずです。
介護腰痛の防止策
また腰痛は精神的なストレスとも密接な関係があります。
ストレスにより脳が疲労していると腰の痛みを感じやすくなってしまうのです。
そうならないためには、まずストレスを解放することです。
つまり、短い時間でもいいので必ず休息を取り、リフレッシュすることです。
それによりストレス状態から自分を解放してあげてください。
大切なのは、どんなに忙しくても必ず休息を取ることです。
休まなければ、腰痛はなかなか良くなりませんから、絶対に休憩は必要です。
介護職は本当に大変な仕事ですが、介護職員として身体を休めることはもっと大切です。
仕事の合間を見て1~2分でもいいので、横になる時間を取り、腰痛を緩和する時間に当ててください。
介護腰痛を理由に退職
腰痛が一向によくならず、介護職を辞めようかと考えている人は多いと思います。
病院に行ってもなかなか症状が改善せず、これ以上悪化させるのが怖いし、もう介護の仕事を続けることが難しいと判断した場合、まずは休職を検討してみることをおすすめします。
ただ、忙しい職場において、休職はあまり歓迎されないかもしれません。
しかし、医師の診断書などがあれば傷病手当をもらいながら一定期間休養することも可能なので、まずは医師と上司に相談してみましょう。
上司に相談しても受け入れてもえない場合は、今の会社は退職せざるを得ないでしょう。
でも、せっかくのキャリアを無駄にするのは勿体無い。
これまでの経験はなるべく活かすことが得策です。
つまり、介護業界内での転職がおすすめなのです。
比較的大きい介護施設に転職できれば、同僚も多いので、業務の負担が分散され、身体的負荷は軽減されます。
また、デイサービスやデイケアであれば、一般的に身体介護を行う場面も多くないため、腰への負担も減るはずです。
さらに、ケアマネジャーや生活相談員などであれば、腰に負担のかかる業務は減るので、資格取得を含め、キャリアアップも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
当然、今まで以上に待遇も良くなる可能性が高いので、一石二鳥でしょう。
是非、介護転職を検討してみてください。
介護職の腰痛Q&A












まとめ
腰痛は、筋肉やじん帯の損傷といった身体的な問題と思われがちですが、実はストレスと密接な関係にあることがわかってきました。
痛みは、すべて脳が感知します。腰痛も腰そのものが痛いわけではありません。
痛みを感じているのは、脳なのです。
ストレスがかかると、脳に疲労が蓄積し、それが腰の痛みを感じる原因になるのです。
もしあなたが腰痛なのであれば、実は精神的な疲労が溜まっているのかもしれません。
是非、自分の心身をいたわってあげてください。リフレッシュするのであれば、働く環境を変えてみるのも、ひとつの方法かもしれません。