介護現場における管理職
介護施設において、介護サービスを具体的に提供しているのは、一人一人の介護職員であることは間違いありません。
しかし、その介護職員を管理しているのは、介護施設の管理職です。
その意味で介護施設の雰囲気や働きやすさ、介護の質などに大きな影響を及ぼすのが、この管理職の存在であるということを忘れてはいけないでしょう。
あなたが介護施設への転職を検討しているのであれば、管理職の能力を正しく見極めることが、とても重要になるかもしれません。
また、もしあなたが管理職なのであれば、自分自身の仕事のやり方と見比べて、長所と短所を再認識してください。
管理職のタイプを見極める
例えば、よくある管理職のパターンとしては「現場に任せきりにしてしまうタイプ」があるでしょう。
介護職員の勤務表を管理職がつくらず、現場の職員に作らせて、自分は現場の自主性を尊重しているという姿勢を示すタイプです。
職員の勤務表を作ることは、現場で働く介護職員を管理することの基本であり、勤務表の管理を放棄した管理職は、そもそも管理職ではないと言えるのではないでしょうか。
その管理職は判断力があるか
また、「まともな判断力があるか」という視点も重要です。介護現場において、何が正しくて、なにが間違えているのかという判断さえできない管理職は意外に多いのです。
外部からの情報をすべて信用してしまうようなタイプであり、介護研修に行っては講師からの情報を真に受けて、自分の介護施設で無理矢理にでも実践しようというタイプの管理職です。
多くの書籍を読み、計画的に介護の実践しようと試みるものの、実際の介護現場はそんなにのんびりしていられません。
このような頭でっかちの管理職がいると現場が崩壊してしまうのです。
このようなタイプは、介護の現場を正しく分析できず、机上の空論に終始してしまうのです。
知識を吸収することは必要ですが、書籍から得る知識よりも、何より介護現場の問題を直視することができなければ管理職は務まらないのです。
いつも言うことが変わる
「言うことがコロコロ変わる」という管理職もいます。
介護現場を取り巻く環境の変化によって、組織が置かれる状況も変化するので、ある程度の方針変更はやむを得ないでしょう。
特に施設の経営者の方針が変われば、管理職もそれに従わなければならないという事情があることはわかります。
しかし、言うことがコロコロ変わる管理職は、午前中の会議で言ったことと、夕方になって現場に指示をしていると言うことが、しばしば正反対になるということがあるのです。
このような曖昧な指示を繰り返す管理職であれば、介護職員は信用することができないでしょう。
職員に信頼されない人間であれば、そもそも管理職の資格がないのです。
管理職の説明能力
「理由を正しく説明できるかどうか」も管理職の大切な資質の1つです。
介護には必ず理由があります。
なぜ今このような介護するのか。
そしてなぜその手順で行うのか。
そう考えてみると、介護というのは理論が重要であり、正しい理屈の上に成立しているということがわかります。
しかし、この理論を持たない管理職がいることも事実です。
「なぜこれをやるのですか?」と尋ねると、「理由なんて関係ない。やればいいんだ」と頭ごなしに命令をしてくる管理職がいます。
このような指示しかできない管理職であれば、正しい介護を施設内に普及させることができないばかりか、介護職員からの支持も得られないでしょう。
管理職であれば、正しい介護の理論を熟知した上で、それを介護職員たちに説明できるようになってなければいけません。
管理職の改善能力
さらに「改善できるか」という能力も問われるでしょう。
介護職員の悩みを一生懸命に聞いて、相談には乗るものの、その悩みを改善できないという管理職は多いのです。
管理職としての能力はこの問題解決能力に他ならないのです。
当たり前のことですが、部下の話を聞くだけであれば誰でもできるのです。
しかし、本当に能力のある管理職であれば、その悩みを聞き終わってから、何らかの解決策を見つけて、直ちにそれを実行する。
そして、その状況を更に改善するように努めるはずなのです。
本当に能力のある管理職であれば部下をみすみす見殺しにするようなことはしないはずなのです。
決定を後回しにしないことも重要
そして「難しい決定を後回しにしていないか」という視点も重要になるでしょう。
能力の低い管理職は、簡単な意思決定はできるのですが、難しい意思決定を後回しにして、問題を先送りにする傾向があります。
自分の能力で対応できそうな簡単な意思決定を数多く抱え、それにより自分は仕事をしている気になっていますが、管理職に求められるのは「難しい意思決定」なのです。
難しい意思決定の中には、介護現場は抱える根本的な問題解決が含まれます。
難しい意思決定を先延ばしにするということは、現場では問題が継続されることになり、いつか重大な事故につながりかねないタネをまくことになるのです。
重大な意思決定ができない管理職のせいで、被害を被るのは現場の介護職員なのです。
わからないと言えない管理職
「わかったような顔をする」という管理職もいます。
特に外部からの転職組で介護現場での経験が少ない管理職の場合は、わからないことを正直にわからないと言えないことがあります。
これは典型的な無能管理職と言えるでしょう。
100歩譲ってわからないことがあっても構わないのですが、それであれば分かる人に権限を委譲し、介護現場がスムーズに回るような仕組みづくりをしてくれればいいのです。
正しい権限委譲ができているのであれば、管理職としての役割を果たしているでしょう。
しかし、分からないことを分からないと認めない頑固な管理職がいるために、介護現場が混乱するのです。
自分のプライドのために介護現場をかき乱すようであれば、決して有能な管理職とは言えないでしょう。
明文化する能力がない管理職
仕事を「文章にせず口だけで説明しようとする」という管理職もいます。
もちろん口頭での説明がすべて悪いというわけではありません。
対面でのコミュニケーションもとても重要であることは疑いの余地がありません。
しかし、重要な事柄は、やはり文章にしておくべきであり、マニュアル化することで、それが介護施設でのスタンダードになっていき、いずれは文化になっていくのです。
確かに文章にするのは非常に手間がかかり面倒です。
さらに表現が稚拙であったり概念が曖昧であったりすると、介護現場から非難が上がるでしょう。
そのため面倒臭くなってついつい文章化をためらってしまうのです。
しかし、この面倒な作業の面倒くさがらずに行えるかどうかが有能な管理職であるかどうかを見極めるポイントになるのです。
この能力がない無能な管理職は常に口頭でのコミュニケーションに終始し、正しく明文化することを避ける傾向にあるのです。
本当に能力の高い管理職を見極めるポイント
このように、管理職の能力は外からは見えにくいので、なかなか正しい判断が下せないかもしれません。
そのため、管理職の能力を正しく把握するためには、やはり日ごろから密なコミュニケーションをとることが重要になるでしょう。
管理職としてどのようなポリシーを持っているのか。
管理職としてどのようなスタンスで介護職員と接しているのか。
あるいは、管理職としての1日のスケジュールを確認してみるのもいいでしょう。
本当に有能な管理職であればこのような質問に明確な回答があるはずです。
もしこの答えが曖昧なようであればその管理職の能力には疑問符がつくかもしれません。
そのような無能管理職の下で働かなければいけない状況は辛いです。
そうならないためにも、転職の際の管理職の見極めは慎重に行ってください。
管理職を辞めたいのであれば
もしあなたが管理職で、もう仕事を辞めたいと考えているのであれば、転職を考えてみるのもひとつの手だと思います。
介護現場をマネジメントできる人材は決定的に不足しているため、有利な条件で転職ができるはずです。
給料は増え、年収は上がるでしょう。
また、休日も増えるかもしれません。
介護職専門の転職サイトに登録すれば、世間には出回らない非公開の求人を紹介してもらえることもあります。
経営者や施設長への不満、待遇、部下との人間関係など、悩みの理由は多くあると思いますが、一度リセットし、新たな環境でリスタートを切るという選択でも間違いではないはずです。
まとめ
あなたが介護職員であっても、あなたが管理職であっても、人間関係で問題を抱えているようであれば、いっそ転職を検討してみてください。