有給休暇の取得
介護現場は、介護職員が自由に有給休暇をとれないほど、慢性的に人手が不足しています。
本来、有給休暇は介護職員の自由な意志によって行使できる権利であるはずですが、介護現場においては希望する日に有給休暇が取れるということはあまり多くないのかもしれません。
当日のシフトによっては、有給休暇が認められず別の日にされてしまったり、申請自体をやんわりと断られたりと、どうしても介護施設側の事情が優先されてしまう傾向にあるのです。
介護職員は、主婦が多いため、子供の病気や学校行事などにより、どうしても仕事を休まなければならないことがありますが、それすらなかなか認められないとなると、「もうこの仕事をやっていられない」というように退職の理由になってしまいます。
介護現場は、チームワークが重要な仕事なので、自分が休んでしまうと、同僚達に迷惑をかけてしまうという心理が働きます。
そのため、なかなか有給を申請しづらい環境にあります。
十分な人手が確保できており、職員がお互いに有休を取得している環境であれば別ですが、他のスタッフが有休取得をしない中では、休みたくても切り出しにくいのが現状です。
これは、介護職員にとっては意外に重要な問題です。
たかが有給休暇と思いがちですが、実は退職につながってしまう大きな理由になるということを介護施設側はもう少し認識しておく必要があるでしょう。
休憩時間
日中に勤務している場合、12時前後に昼食の休憩として1時間ほど休めるはずですが、多忙極める介護現場においては、この昼休みさえ消えてしまってる場合が多くあるのです。
介護職員が昼食をとりながら休憩をするということは、介護職員が利用者の側を離れて、別のところで食事休憩を取るということなので、結果的に現場にいる介護職員の人数が減ってしまい、現場が混乱をきたしてしまうのです。
このような事態を防止するために、介護施設の中には職員の昼食は利用者のいる食堂で一緒に摂るように強制しているケースもあるといいます。これではただ単に昼食をとっているに過ぎず、決して休憩とは言い難い状態にあるのです。
まして、自分が食事をとりながら、利用者の食事介助をしているという状態なので、自分の食事をとった気がしないというか介護職員も多いのではないでしょうか。
介護現場のやりがいとは
このように介護現場で「きつい」という経験をした介護職員はとても多いと思われます。
しかし、介護職員の中にはこの「きつい」を「やりがい」と捉えている人が少なからずいるのです。
この認識のズレはとても重要です。
これによって日本の介護の実態が浮かび上がってくるからです。
介護現場が比較的特殊なものであり、そこで働く介護職員の数もそれほど多くなかった古き良き時代は、きついと言われている仕事に耐えられる介護職員だけが生き残り、介護の現場を担っていました。
この状態であればさほど問題はありませんでしたが、介護が一般化し、社会インフラとして存在している現代においては、介護職員も優秀な人材だけでは賄いきれなくなっているのです。
当然、きつい勤務に耐えられない介護職員も増えてきています。
もし、「きつい」を「やりがい」と感じられない介護職員が、自然と淘汰されてしまっていけば、ただでさえ人手不足の介護現場は、とても回っていかないでしょう。
これからの介護現場は、きつさに耐えられない人でも安定的に仕事が回せるように、平準化してだれでもが対応できるような仕事に落とし込む必要があるのです。
もし、それができないようであれば、介護現場は本当に崩壊してしまうでしょう。
介護の仕事を誰でもできる仕事に
これからの介護現場は、優秀な介護職員だけではなく、ごく普通の人が普通に勤務できるような状態にして、それによって人手不足を解消するような体制を整えなければいけないのです。
「きつさ」を「やりがい」と捉えられるような優秀な人材だけではなく、定年退職後のおじさんが気軽に勤務できるような体制を整えることによってのみ、これからの介護現場は生き残ることができるのではないでしょうか。
理想の介護を追求することは間違いではありませんが、それによって人手不足に拍車がかかってしまうようでは本末転倒と言えるかもしれません。
それよりも慢性的な人手不足を解消することによって、その上で理想の介護追求する方が極々自然な介護の形だと思われます。
介護の質を上げるよりも、介護現場の労働環境の質を上げてもらう方が、そこで働く介護職員にとっても利用者にとっても歓迎すべき状態なのではないでしょうか。