介護現場にはびこる精神論
多くの介護施設では介護サービスの質を上げようと様々な取り組みをしてきていると思います。
しかし、実際にその努力が実を結ぶ事は意外にも多くないのです。
一時的には介護サービスの質が上がるようになっても、時間が経てば元の状態に戻ってしまうというケースが非常に多いのです。
それはなぜでしょうか?
介護業界ではみんなで頑張ってやれば何とかなるという精神論が極端に重視される一方で、介護サービスを生み出している仕組みそのものが軽視されているからではないでしょうか。
特に「精神論」にとらわれている福祉施設はそこで働く人にとってはかなり悪い影響を与えてしまうものだと思われます。
人手不足を精神論で解決
多くの福祉施設では人手が足りていませんが、ここに精神論が持ち込まれると「みんなで頑張ってやれば何とかなる」「何とかなっていないのは頑張りが足りないからだ」「つべこべ言わずに頑張れ」と言うような思考になってきてしまうのです。
介護施設で働く人はこのような指示に異議を唱えることもできず、数ヶ月はなんとか頑張ってみるものの、やがて疲れ果て燃え尽きてしまって組織がゆっくりと崩壊に向かっていくのです。
また、燃え尽きるほど真面目でない人の場合には、「適当にやれば良い」と妥協してしまい、中途半端な介護サービスを提供することになってしまいます。
このように介護施設で働く従業員を酷使して、すり減らしてしまうというのはまったく言語道断です。
また、燃え尽き症候群にならないまでも、介護サービスそのものの質が低下してしまえば、そこで働く人たちのモチベーションも一緒に低下していってしまうでしょう。
必要なのは仕組み化
こうなってしまうのも介護サービスの質を支える仕組みが、そもそも作られていないことに原因があります。
介護サービスを生み出す仕組みは施設によって違いがあり、またレベルにも違いがあります。
優れた介護サービスの仕組みを提供している施設はベースとなる仕組みそのものが優れているため、仮に介護職員が変わったとしても常に安定したサービスを提供することができるようになっているのです。
中でもとても重要になってくるのは提供しているサービスに対しての必要な人材が確保されているということです。
介護職員の能力ではなく、あくまでも人員によるサービスの質を担保しているという考え方をとっているために、職員が変わっても一定のレベルを維持できるようになっているのです。
心の重視も危険な兆候
「介護は心」というお題目も非常に危険です。
介護職員が日々の労働で疲れ切ってしまっているときに、無能な上司や経営者「心」の話をしだしてしまうと、介護における問題の本質を見誤らさせてしまうのです。
「心の話」は時に便利ではありますが、現場において起こっている問題を根本的に解決する手段とはなり得ないのです。
現場で起こっている介護に関する問題は心ではなく、やはり仕事のやり方を改善しなければならないのです。
この改善するという文化が定着していない介護施設の場合には、度重なるトラブルに嫌気がさして多くの従業員が職場を去ってしまうということになります。
これまで介護の現場は「精神論」や「心」に支配されてきましたが、これからは介護サービスをビジネスとして捉えて効率よく正しいサービスを提供できる体制を整えるということが何よりも重要になってくるはずです。
理想の介護の追求は無意味?
介護施設で働く人から「理想の介護」という言葉をよく耳にします。
これまで提供してきた介護サービスよりもより良いものを提供したいという姿勢が「理想の介護」という言葉によって表現されているようです。
もちろんこれを追求することは決して悪いことではありません。
むしろ、サービスの質を向上させようとする取り組みなので、賞賛されるべきかもしれません。
しかし、サービスの質を無条件で追求するあまり、そこで働く人の気持ちを無視してしまっていれば本末転倒になりかねないのです。
理想の介護の基本は、あくまでそこで働く人の幸せの追求であるということを忘れてはいけないのではないかと思います。
理想を追求するあまり、介護職員に過剰な負荷がかかってしまい、離職率が向上し、わずか1年で職員の半数が入れ替わってしまうというようなことがあれば、理想とする介護など提供できるはずがないのです。
「理想」が働く側のエゴで決められるのではなく、あくまで利用者やその家族、また社会そのものの要求を満たす「理想」であることが何より重要であり、この追求こそが現在の介護現場で求められている意識改革の根本かもしれないと思うのです。
今の介護環境に限界を感じているなら・・・
もし、あなたが働く介護施設が働きやすい職場でなかったとすれば、その状況を変えなければいけないでしょう。
そのひとつの選択肢は「転職」かもしれません。
「介護職を辞めたい・・・」と思っているのであれば、あまり我慢をせず、いっそ転職をしてしまうという選択も間違いではないのです。

