世界でも類を見ない速さで進展している我が国の高齢化社会。
高齢者の生活を支えるために絶対に不可欠なのは、なにより「介護士」の存在です。
現状でも慢性的な人手不足が続いている介護業界ですが、今後ますます高齢化が進んでいくとなれば、より一層人手不足になることは目に見えています。
そうなれば、いっそう人手不足に拍車がかかりますので、介護現場は今以上に人材確保に積極的になるはずです。
つまり、売り手市場になるということなので、介護業界未経験者であっても、転職への門戸は開かれていくと考えても間違いないということです。
実際、未経験の介護転職から年収500万円を実現した事例も多くあります。
しかし、無条件に転職ができるわけではありません。
未経験でも介護職員として採用されるために必要な能力とはなんでしょうか。
このあたりを詳しく見ていきましょう。
介護業界とは
最近では当たり前のように認知され、十分に市民権を得ている介護業界ですが、実はまだまだ新しい業界なのです。
民間の介護業者に市場参入が認められたのは2000年です。実質的にはまだ10数年しか経っていない業界なのです。
それまでの介護業界といえば、暗いイメージが付きまとい、サービスを受けることさえ憚られる雰囲気がありましたが、民間の参入が認められて以降、少しずつ経済合理性が働き、業界自体が活性化してきたと言われています。
2000年から比べると、現在では介護保険の総費用は3倍になっています。
それだけ市場が広がり、人材のニーズも多様化しているということが読み取れるでしょう。
このような背景の中で、自分が介護業界でなにができるのかを熟考することが重要になります。
そして、その答えを志望動機に反映させてください。
介護業界のニーズとマッチする志望動機があれば、未経験でも採用される確率は高くなるのです。
介護業界で働くということ
これだけ市場が急拡大しているので、どの介護施設においても慢性的な人手不足が続いています。
そのため、どの施設においても積極的な採用を実施してきたという経緯がありました。
また、長期の景気低迷により、民間企業の人材採用が抑制されたため、その余剰人材が介護業界に流入してきたという流れがありました。
その結果、介護業界で起こったのは「定着率の悪化」です。
元々、大量採用を実施していたので、どうしても介護業界に適正のない人材を採用してしまうことになり、そのような人が早々に退職してしまっていきました。
また、本来介護業界を志望していなかったにもかかわらず、他から採用されなかったため、仕方なく介護業界を選んだという人が、やはり早期に退職してしまうということがおきました。
そして、「介護業界はキツい」「介護業界は給料が安い」といった噂が一人歩きしていってしまい、「働きたくない業界」というイメージが定着してしまったのです。
介護業界への転職を考える場合、このようなイメージにより、不安を持つ人が多いのですが、それはいろいろな事情が重なってできた事象であり、あくまでイメージが先行してしまった面が強いと思います。
現実に適性のある人は十分に定着していますし、やりがいを感じながら、キャリアアップをしています。
自分が「なぜ介護業界で働きたいのか」「介護業界でどんな仕事がしたいのか」を真剣に考え、それを志望動機に反映させられれば、未経験かつ無資格でも採用される確率は高くなるのです。
介護業界の適性
介護業界は不人気な仕事というイメージが定着してしまっています。
しかし、高齢者が増えるし、仕事は高度化し、忙しくなる一方です。
そこで、介護施設側は、なるべく良い人材を採用したいと考えるものの、一定以上の能力があれば積極的に採用しようという意欲に溢れています。
ただし、志望してくる人をすべて採用するわけではありません。当然、それなりのハードルがあると考えてください。
介護施設側は「せっかく採用したのにすぐに辞められてしまう」と言う状況だけは絶対に避けたいと考えています。
そのために、「嫌ならすぐに辞めてしまうのではないか」という点は厳しくチェックされるでしょう。
例えばこれまでの経歴です。1つの会社にあまり長く務めた経験がないとか、転職を繰り返しているという事では印象が悪くなってしまうでしょう。
また、辛い状況に耐えられるかと言う「ストレス耐性」も重視されるに違いありません。
これは、すぐに辞めてしまうということにもつながりますが、嫌なことや辛い事を我慢できない人だと、やはり介護の仕事は務まらないのです。
嫌なことがあっても頑張る意欲があるかどうかという点はとても厳しくチェックされるでしょう。
そして、それらの土台となる「なぜ介護の仕事をしたいのか」という志望動機が重要になります。
介護業界を目指す理由やそこで実現したい夢などを持っている人は、多少辛くても我慢することができますが、曖昧な志望動機の人は、嫌なことがあればすぐにやめてしまうと思われるかもしれません。
「自分は介護業界未経験ですが、◯◯な理由でどうしても介護の仕事がやりたいんです」という気持ちを伝えることができれば、採用される確率は格段に高まるでしょう。
介護業界での働き方(雇用形態)
介護業界での仕事内容は高齢者の身の回りの世話が中心となります。
働く場所は、老人ホームや高齢者の自宅など、多様です。
これは、どんな仕事がしたいか、または、どんなスタイルで働きたいかなどによって勤務先が決まってくるでしょう。
それぞれの勤務先において、働き方(雇用形態)は主に4つです。
■契約社員
■派遣社員
■パート(アルバイト)
これらは、どれも未経験者でも採用される形態です。
もちろん未経験でも正社員採用されることがありますし、さらに無資格でも十分に採用される可能性があります。
実際、40歳で介護業界未経験、無資格の人が正社員採用されることも珍しくありません。
志望動機が明確で、面接での人間的評価が高ければ、40歳以上でもポテンシャル採用は十分にあり得ると考えて間違いありません。
多くの介護施設は、未経験者を採用し、現場で経験を積ませながら、資格取得を支援するという方法をとっています。
まずは現場のスタッフからはじめ、介護福祉士の資格を取り、その上でケアマネージャーの資格を取る。
現場の経験を十分に積んだ上で、施設長やバックオフィスなどの管理業務ステップアップしていくキャリアプランを用意しているところが多いと思います。
もちろん、最初はパートから始まり、十分に経験を積んだ上で社員登用されるケースも多くあります。
未経験者と言うことで、最初はパート採用になることがあるかもしれませんが、その後、社員のキャリアアップができるかどうかを最初に確認しておくことが重要になるでしょう。
未経験でも介護転職を成功させるために必要になるポイント
本当に介護業界未経験で、かつ無資格。しかも40歳以上で介護職に転職しようとすれば、少なからず不安があるでしょう。
そこで、未経験でも介護転職を成功させるためのポイントをご紹介します。
他業界よりも採用される確率が高い
介護業界は圧倒的な人手不足で有効求人倍率も他業界の倍という状況です。
高望みさえしなければ、かなりの高確率で仕事が探せる環境にあります。
研修はないと覚悟する必要がある
大手企業に勤務経験がある方の場合、介護業界の放任主義に驚くかもしれません。
人材を育てようとの意図は感じられないため、最初は落胆するかもしれませんが、OJTが中心の業界だと諦める必要があります。
基本的な資格(介護職員初任者研修)は取得しておく
介護現場では研修などないと思ってください。それだけに基本的な資格は取得しておき、最低限の知識を持った上で転職すべきです。
もし本当の初心者だと辛い思いをすることになるでしょう。
遠慮していては脱落する
周囲の人が忙しそうだから、質問できないなぁ・・・と思っていたら、あっという間に置いていかれます。
遠慮するタイプほど「使えない」と嫌われる傾向にあります。
契約社員やパートでも受け入れる
まずはなにより、経験を積むことが大切なので、雇用形態に固執するのはやめましょう。
正社員でなくても、まずは介護職としての実績をつくることを優先してください。
仕事に慣れて、成果を出せば、正社員になれる可能性は高まります。
体力はあまり必要ない
体力に不安のある40代でも十分働けます。入浴介助などはコツが掴めればそれほど体力はいりません。
それよりも精神力の方が求められるでしょう。
上司や同僚、入居者やその家族との人間関係に疲弊しない強いメンタルが必須になります。
定年まで働けます
介護現場での需要は旺盛なので、経験と資格さえあれば60~70歳まで働けます。
現場での経験を重ねた上で、ケアマネジャーの資格を取得するなどし、着実にキャリアアップをすれば、一生食うに困らないでしょう。
当面は厳しい時期が続く
未経験者の場合、半年くらいは我慢の時期になると思います。
これまでとはまったく違う業界で四苦八苦することは間違いありません。
それに腐ることなく、これまでの人生経験を生かせれば、すぐに馴れてきて、介護の仕事が楽しいと思えるようになるはずです。
40代で介護未経験でも転職は可能か?
最近は大手企業でも40代になるとリストラ対象になってしまうことがあります。もう終身雇用が約束される時代ではありません。
ある日突然、リストラを宣告されてしまった人が転職先として考えるのが介護業界です。
介護業界は、人手不足なので、未経験の40代でも採用される可能性があります。
一般的に40代の転職は、30代よりハードルは高くなりますが、実際に採用されているケースも多くありますので、諦める必要はありません。
中には「資格、経験、年齢不問」という求人も存在します。
但し、40代の転職には、ある程度の条件が科せられます。20代のようにバリバリ仕事をこなすような体力や意欲がなくなってきていることは事実でしょう。
そのため、いきなり正社員として採用されることは稀です。この点の認識は持っておいてください。
やはり40代ですから、長期的なキャリア形成は難しいのが現実です。
まずは正規雇用ではなく、パートやアルバイトで採用し、その後は本人の能力ややる気などを勘案し、正社員への登用を検討するケースが多いようです。
40代介護未経験の男性におすすめの就職先
デイサービス・デイケア
デイサービスやデイケアは、夜勤がないと考えてもいいでしょう。
また、一般的に身体介護を行う場面も多くないため、体への負担も小さいという特徴があります。
業務は職場によって異なりますが、運動器具を使った運動の見守りや集団での運動指導などを担当します。
また、レクレーションの司会、食事の準備などが付加的な業務も多いため、心身の負担は軽くなるでしょう。
このように、基本的には夜勤がなく、専門知識を求められる場面も多くないことから、デイサービスやデイケアは40代で介護業界未経験の人介護職にはおすすめの職場です。
介護タクシー・ケアドライバー
介護業界へ転職する40代の男性におすすめな仕事のひとつは「要介護者の送迎」でしょう。
送迎に関する業務は、女性よりも男性の方が雇用されやすい傾向にあります。
介護タクシーの運転手には「普通自動車2種免許」が必須です。
また、ケアドライバーは「普通自動車2種免許」に加えて「介護職員初任者研修」を修了しておくことが必要です。
これらの要件を満たす必要があるので、もし、これらの資格がなければ、まずはその取得から始めなければいけません。
応募の際の注意点
志望動機
志望動機とは「なぜ介護業界やこの施設で働きたいのか」という意味の質問に他なりません。
なぜ介護の仕事を目指したのか。さらに、なぜその施設を希望したのかということをしっかり自分の言葉で話せるようにしておきましょう。
また、未経験はそれだけでハンデがありますので、仕事への熱意をアピールすることがとても重要になってきます。
理想はこれまでのキャリアを生かしながら、その経験を介護の仕事とリンクさせられるポイントを見つけ出すことです。
さらにあなた自身の人間性を高めていけるような点があり、それらをうまく統合できるような答え方ができるとベストです。
一方、「家から1番近かった」や「稼げそうだったから」というような自己中心的な回答は絶対にNGです。
採用とは、あくまでも両者のメリットを一致させることです。
とくに相手は未経験者を採用するのはリスクであると考えているかもしれません。
その上、あなたのメリットだけを前面に出しては、相手からいい印象を持たれるはずがありません。
むしろ、あなたは採用してもらう側なので、「自分を採用すると御社にはたくさんのメリットがあります」ということをアピールし、納得させるようにしなければいけません。
面接
中途採用なので、相手は一般常識があることを前提に面接をしてきます。
聞かれたことに正確に答えることができなければ、コミュニケーション能力が低いと判断されますし、あまりピントがズレた返答をしてしまえば、そもそもの知的レベルを疑われることになります。
もちろん、服装や髪型も大切です。最低限の清潔感を保つようにしましょう。
たかが面接という態度で臨むのではなく、十分な対策をした上で、万全なシミュレーションをしておきてください。
また、可能であればフロア見学を依頼してみましょう。
面接官は経営者や管理職が多く、殆どの場合、現場スタッフではありませんので、実際に働くイメージが湧きづらいと思います。
さらに、面接時に使われる会議室などの雰囲気だけでは施設の全体像は理解できないでしょう。
現場を見て、実際に働いている人たちの雰囲気がわかれば、入社すべきかどうかを判断しやすくなります。
スタッフが笑顔で利用者と接しているか。
またスタッフ同士が気持ちのいいあいさつをしているかどうかで、本当の職場環境を垣間見ることができるのです。
まとめ
介護業界は慢性的な人手不足なので、未経験者でも十分採用される可能性があります。
しかし、誰でもが簡単に採用されることはありませんので、覚悟を持って転職活動をしてください。
採用の確率を高めるためには、資格を取得するなど、自分の価値を高める必要がありますが、中には、資格取得代金を負担してくれる転職サイトがあるので、金銭的なサポートを受けながら、転職活動をしてみてもいいかもしれません。