介護施設を選ぶ上で忘れてはいけない重要なポイント
介護施設で重要なポィントは、必要な人員、スタッフが適切に配置されているということです。
老人ホームのパンフレットを見ると、介護スタッフが高齢者に寄り添って話をしたり、笑顔で話を聞いたりしている、ゆったりとした生活、介護のイメージ写真が使われています。
しかし、時間帯にもよりますが、実際はとても慌ただしく、忙しい仕事です。
早朝は入居者を起こし、着替え、洗顔、歯磨き、朝食の準備など様々な業務が重なります。
朝食が終われば、通院の準備、入浴介助や排泄介助、すぐに昼食となり1日はあっという間です。
それはディサービスなどでも同じです。
送迎から入浴、食事、レクレーションの業務が続き、気が付けばまた送迎の時間です。
しかし、「忙しい」ということと、「人が足りていない」という状態は基本的に違います。
それは、介護保険法上の指定基準を満たしていればよいというものではありません。
指定甚準は利用者数対比で定められていますが、同じ利用者数でも、重度要介護高齢者が増えると必要なサービス量は増加します。
介護サービス量に合わせて、安全に介護ができる体制が構築されていなければなりません。
この人員配置は「安全に働ける環境か」を知る上でも重要です。
介護スタッフが不足すれば、事故やトラブル発生のリスクは高まります。
また、骨折事故や死亡事故が発生し、裁判になった場合でも「低価格の介護付だから指定基準で十分」「指定甚準の人数でできることだけをやればよい」という判断にはならないからです。
ポィントとなる3つの介助場面
①食事介助
1つは、食事介助です。
食事は高齢者にとって、大きな楽しみの1つです。
最近は、嚥下機能や咀嚼機能の低下した高齢者も安全に食べられる、見た目にも美味しそうな介護食が開発されています。
しかし、同時に食事は事故の発生の可能性が高い生活行動の1つです。
特に、脳梗塞などで麻痺のある高齢者や、慌てて食べる傾向のある高齢者は、誤嚥や窒息リスクが高く、認知症高齢者は、おしぼりをロに入れるなどの異食もあります。
読売新聞の調査によれば、2015年の老健施設や特養ホームでの不慮の事故による死亡件数は1064人に上り、そのうち窒息が528人、特に重度要介護高齢者の死亡事故の大半は、食事中の誤飲や誤嚥が原因だと報じています。
そのため、直接的な介助だけでなく、うながし、声掛け、見守りなどの「問接介助」、更には誤嚥や窒息したときの「緊急対応」が行える適切な数の介護スタッフの配置が必要です。
重度要介護高齢者の多い特養ホームで、1つのユニット(10名程度)に食事介助者が1人というところがありますが、これは十分だとは言えません。
直接介助が必要な高齢者が多いと、他の高齢者の見守りが不十分となるため、事故の早期発見、早期対応が遅れます。
誤嚥や窒息が発生したとき、1人で痙孿している高齢者への救急対応をしながら、看護師や救急車を呼ぶというのは困難です。
②入浴介助
2つ目は、入浴介助です。
入浴は、身体的な負担が大きく、血圧の急激な昇降を伴うことから、心筋梗塞や脳出血などのリスクも高くなります。
ふらつきによる浴槽の出入り時の転倒、シャワーチェアからの転落、操作ミスによる熱傷も多く、骨折や死亡など重大事故発生の可能性が高い生活行動の1つです。
厚生労働省の研究班の調査では、入浴中の急変や溺水などの死亡事故は、全国で1万9000件になると推計されており、うち65歳以上の高齢者が9割を占めます。
社会問題となっている高齢者の交通事故死よりも圧倒的に多いのです。
要介護高齢者の入浴介助は、大浴槽であっても、個別浴槽であっても、入浴者から目を離さないで介助するというのが絶対条件です。
現在は、送迎から、脱衣、入浴、着衣まで1人の介護スタッフがマンツーマンで入浴介助を行うというスタィルが中心です。
しかし、事業所の中には、入浴時にスタッフが付き添いしておらず、1人の介護スタッフが複数の入浴者、浴室を見回りながら介助するというところがあります。
これは非常に危険です。転倒や溺水などの事故は、数分離れただけでも発生します。
また、介護スタッフは「ほんの数分」のつもりでも、バタバタと忙しく仕事をしているのですから、10分や20分はあっという間に経過しています。
リスクマネジメントが適切に行われている事業所では「下着を持ってくるのを忘れた」と言う場合でも、入浴介助スタッフが直接部屋に取りに行くのではなく、他のスタッフに依頼して、浴室まで持って来てもらうという対応をとっています。
③夜勤スタッフ配置
もう1つは夜勤スタッフの配置です。
夜勤帯は、日勤帯と比較して、介護スタッフの数が極端に少なくなります。
全ての高齢者がぐっすりと眠ってくれていれば、穏やかな夜になりますが、疾病が急変したり、認知症の高齢者が不穏になって起き出し、それが他の高齢者に連鎖すると忙しい夜になります。
現在は、要介護高齢者を対象としたユニット型特養ホームや介護付有料老人ホームでは、およそ110名の入居者に対して1人の介護スタッフが対応するというところが多いようです。
ただし、小規模、少人数であっても、夜勤対応は2人以上というのが原則です。急変や転倒など、何かトラブルが発生した場合、1人では必要な対応ができないからです。
人員が不足している場合の対応
十分な人員が確保されていない介護施設の場合、事故などのリスクが高まります。
当然、その責任を負わされる確率も高まるので、非常に危険と言えます。
最悪の事態になる前に、転職をしてしまうという選択も考えるべきでしょう。
人員が豊富で、安心して夜勤ができる環境の介護施設も多いので、ストレスも軽減されるはずです。
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