無駄な会議は介護職員の意欲を削ぐ
ただでさえ人手不足であり、職員の退職が多い介護業界において、スタッフのモチべーションを高め、離職率を低下させるにはどうすればよいのでしょうか。
まず、介護現場において、職員のやる気を引き出すためにその運営のやり方を再考すべきなのは、随所で行われる会議です。
やる必要性が乏しい無駄な会議は当然としても、それ以外にも課題は多くあるでしょう。
中でも問題なのは「発言者が決まってしまう」という点です。
管理職からの一方的な伝達だけであったり、実質、若手には発言の機会がない会議では「参加している人としていない人の差が大きく出てしまう」という点が問題になります。
発言の機会がなく、実質的には「参加していない人」にとっては、その会議は苦痛でしかなくなります。
当然、内容は上の空で、ケアの改善にどうつながるのかが見えなくなるでしょう。
本来は、多様な意見を交換し、情報を共有することで「ケアの均質化」を図ることが会議の目的の一つですが、逆にサービスの質のばらつきを生む要因になる可能性もあるのです。
特定の専門職だけが発言する会議を見直す
介護現場のダメな会議
このようなモチベーションを低下させてしまう会議をなくすにはどうすればいいのでしょうか。
ポィントは「会議の進め方」にあります。
よく見られるパターンは以下の通りです。
①報告者がケ―スなどを発表する
②報告者に対して司会者が参加者に意見または質問を求める
③特定の人や司会者だけが発言する
④報告者がそれに答える
⑤少数のやりとりでとりあえずまとまる
⑥ほかに発言を求めても出ないので終了
これでは会議が「特定の人の話をうかがう」だけの場になってしまい、チーム全体の参加意識が高まるはずもありません。
会議の場というのは、それ自体、日々のケアに対する検証の場であり、チーム内のPDACサィクルを機能させることが隠れた目的です。
司会者はまんべんなく発言を求めようとするのですが、なかなかそうはなりません。
看護職や管理栄養士などの職種は、それぞれの立場からよく意見を述べています。
しかし、介護職からの発言はほとんどないケースが目立ちます。
看護職などが発言すると、介護職としては医療系知識が不十分なためにかえって畏縮してしまうのです。
特養ホームでは結果的に「療養ケアカンフアレンス」のような感じになってしまうことがあるのです。
司会者は持ち回りにする
このような一方的な会議にしないためには、司会者を現場リーダ一やケアマネジャーだけが担当するのではなく、チーム全員がもち回りで担当するのが望ましいでしょう。
司会者の立場を経験することで、自分が発言者になる際に「どのような情報提供が求められているか」が理解できるのです。
また、発言に慣れることで、積極的に発言する習慣が付くようになります。
介護現場の会議の進め方を変える
改善案を出す
これまでの内容を参考に、会議の進め方のルールを少し変えてみてください。
まず、司会者は事前にケース報告者と打ち合わせをし、ポィントとなる課題を3つ抽出します。
その課題に対して、関わりの深い専門職に対し、会議当日までに自分なりの案を考えてもらってください。
そして、当日は報告者の次に、課題毎の発案者に発言してもらうのです。
さらに、それぞれの発案に対し、「生活支援」「療養支援」「栄養改善」「機能訓練」という具合に、参加する専門職の分野ごとに「配慮・改善したい点は何か」と意見を求めます。
それがひと通りすんだら、フリーに意見を求めるという具合です。
緊張感と責任感を持たせる
これにより、参加している全員が、自分の専門性を意識しつつ発言しなければならないという緊張感を持つことができます。
お膳立てしすぎという意見があるかもしれませんが、会議において自分の考えで発言するという習慣をつくることは重要です。
自分も参加するんだという意識が高まれば、それ以降は自然によい会議が開催されるようになるはずです。
この場合、最初に課題を抽出するなど、司会者に高いレベルが求められます。
あえて、この司会役を持ち回りで担当させ、慣れない人は管理者が相談に乗りながら、サポートしていく形で進める方法もおすすめです。
司会に慣れた人であれば、「あえて物議を醸す」という課題設定をする方法もあるでしょう。
現場ごとにいろいろと工夫を加え、それぞれの施設毎の特色を出していければベストです。