評価による人間関係の悪化
介護職員の人間関係はとても複雑で、それが原因で退職してしまう人も多いでしょう。
その人間関係を悪化させてしまう要因として、無視できないのが「スタッフが考える実績と実際の評価のバランスがとれていないとき」です。
「なぜ、あの人は評価されて、自分の評価が低いのか」との思いが生まれ、それがエスカレートすると「えこひいき」と考えるようになるのです。
「この組織では正当な評価がなされない」と受け取られてしまうと、モチベーションが低下するだけでなく、評価されている人が疎外されるなど、人間関係悪化のリスクが高まります。
ベテラン職員の評価
このケースが発生しやすいのは「評価されている」のが比較的若いスタッフで、相対的に経歴の長いべテランスタッフの評価が低い場合です。
事務業務をIT化する場合などは、ベテランスタッフに「なかなかついていくのが難しい」という苦手意識が働きます。
このような若手が有利になる業務の場合、しっかりベテランをフォローしつつ、評価の公正性を目に見える形で提示できないと、不公平という意識が強まりかねません。
そのためには、昇給などの評価基準を含む、人事評価制度を明確にすることが必須です。
近年、多くの介護施設でも人事評価制度が整備されてきました。
1年に1回、ス夕ッフ全員を対象とした「評価面接」を行っているケースも多いと思います。
面接を始める前に、何を評価するかという基準を全員に提示しておけば、不公平感が緩和されるでしょう。
わかりやすい評価にする
人事評価を行う際、とても複雑な評価指標が用意してしまうことがありますが、それでは現場ス夕ッフには難解と思われてしまうかもしれません。
用意する評価項目は、できるかぎりシンプルで、かつ具体的なものにすることがポイントです。
複数の目で評価する
それでも難しいのは「本人はできている」と思っても、管理者から見て「できていない」という評価の食い違いが生まれることです。
そこで、管理職だけではなく、複数の評価者を立てるとともに、評価項目の内容によって専門職の目を通させることが大切になります。
例えば、看護師やリハビリ職の評価を入れれば、公平性が担保できるでしょう。
人材マネジメントの評価においては、複数評価法には2種類あります。
1次評価は現場管理者、2次評価は部門統括者が担当するという「段階的な評価制度」と、多職種による「多面的な評価制度」に分けられますが、このどちらもバランスよく採用すると評価が安定します。
実績も評価の対象にする
もう一つ重要なことは、ベテランスタッフを評価する場合は、それまでの実績や経験を評価に加えることです。
例えば、「若いスタッフへの日常的な指導者役を果たしてくれている」といった指導的な項目の追加が考えられます。
これにより、ベテラン職員は、自分の居場所を確認でき、「自分たちも評価される余地がある」という安心感を持つことができます。
そして「施設側が自分たちの苦労をきちんと見てくれている」という帰属意識が高まります。
「ベテランだからこそできる」ことへの自負が生まれれば、若い人たちへの「やっかみ心」などはだいぶやわらげることができるでしょう。