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介護のリスクが理解できていない介護施設は離職率が高い

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介護リスク

介護現場の事故報告書

介護のリスクマネジメントで、大きな課題となるのが事故対策です。

「介護事故の対策を行っている」という事業所は多いのですが、「一応やっている」ということと、その対策が適切なものか、役立つものかは全く違います。

その1つは、事故報告書です。利用者、入所者に転倒や転落などの事故が発生したときに、その原因や状況、改善点を整理して、管理者や経営者に報告する書類です。

大きく分けると、2つの課題が目につきます。

内容が稚拙

最も多いのが、報告書ではなく反省文です。事故が発生した状況・原因の分析、及び同じような事故を予防するための対策の検討が、まったくできていません。「歩行中に目を離したときに転倒、今度から目を離さないようにします」などという文言を目にしますが、1人の高齢者の行動から常時目を離さないでいることなど、できるはずがありません。

活用されていない

事故報告書を作成する目的は、同じような事故を繰り返さないように業務を改善することです。しかし、原因の究明をしないまま「目を離した隙に……」「気が付くと……」と介護スタッフ個人の責任とされ、「今度から気を付けてね」という注意喚起だけで回覧され、印鑑が押されて閉じられて終わりです。その後は誰も党えていません。

 

このような「あるだけ事故報告書」は、役に立たないというだけでなく、有害です。

「とりあえず報告書を出せば終わり」という意識が蔓延すると「なぜ事故の報告が必要なのか」を考えなくなります。他の介護スタッフは「あの人が事故を起こした」「私の介護の時ではなくてよかった」という認識しかなく、「面倒くさい」と事故の隠蔽や報告書の改竄が進んでいきます。

結果、同じような事故が何度も発生し、骨折や死亡で裁判となった場合、「これまでも同じような事故があつたのに必要な対策をとっていない」と厳しい判断が下されることになります。

業務マニュアルがリスクを拡大させる

介護マニュアル

多くの事業者に共通する、もう1つの課題は「業務マニュアル」です。「安全介護手順マニュアル」「初期対応マニュアル」「事故解決対応マニュアル」は、事業種別を問わず、介護事故対策の土台となる不可欠なものです。大手の介護サービス法人、介護保険施設などでは、ほとんどの事業所で整備されています。

しかし、それは「あればよい」というものではありません。全スタッフに周知徹底され、実際の業務がマニュアルに基づいて行われてこそ、初めて意味をなすものです。

しかし、実際には、事務室の棚の奥にしまつてあるだけで、ほとんどの人が見たことがない、新人スタッフはその存在すら知らないという事業所も少なくありません。ひどいものになると、インターネットで検索したものをそのまま丸写ししており、現実的には不可能なものや、実際の業務内容との整合性が取れないようなものもあります。

このような「あるだけ業務マニュアル」もまた有害です。「マニュアル通りに介助しなくてもいい」「チームケアではなく我流の介護をすればいい」と示しているのと同じだからです。

また、重大事故が発生して裁判になった場合、現実的に不可能なマニュアルであっても、事業者自らが策定したものですから、「マニュアル通りに介助が行われていない」と、それが決定的な証拠となり、契約義務違反として厳しい判断が下されることになります。

リスクマネジメントは介護業務の基礎

事故対策は「発生させないこと」だと考える人は多いのですが、それだけではありません。高齢者の安全な生活に十分な配慮をする義務がありますが、事業者がどれだけ努力をしても、転倒や誤嚥などの事故の発生をゼロにすることはできないからです。

「ケガの程度を軽くするための対策」「事故が発生した場合の初期対応」「家族に対する事故リスクの説明」「裁判や訴訟になった場合の対策」なども、リスクマネジメントの重要な視点です。

リスクマネジメントは、「業務マニユアルを作っている」「事故報告書をつくっている」「リスクマネジメント委員会がある」という単独・個別のものではありません。通常行っている介護、看護、食事、相談などすべての業務サービスをリスクマネジメントの基礎として行うことが必要です。

建物設備備品の見直し

事故対策の基礎となるのが、設備備品の見直しです。

介護事故の発生要因は「高齢者の身体機能の低下」「介護スタッフの失敗・ミス」「建物設備備品」に大別されます。ただ、事故の多くは単独の原因ではなく、「建物設備の選択ミス」と「身体機能低下」など複数の要因が重なった場面で発生します。

その歪みはスタッフ教育やケアマネジメントで埋めていく必要があるのですが、要介護高齢者の身体機能は日々大きく変化しますし、知識や技能の習得、徹底には一定の時問がかかります。そのため、介護事故の発生予防、被害の拡大予防の底上げのためには、建物設備備品の選定や、日々のメンテナンスが重要になります。

福祉機器や介護用具を選ぶ目を養う

その選択要件の筆頭に挙げられるのは言うまでもなく「安全性」です。

ただ、ディサービスや介護保険施設、高齢者住宅などで、様々な高齢者が利用する場合、ある人の要介護状態にはピッタリの安全の車いすだけれど、その他の人には危険ということでは、使い勝手が悪くなってしまいます。結局、車いすが足りなくなって、すべての人に合わない車いすを使わざるを得なくなり、事故リスクが高まるという事態になります。

そこで重要になるのが「可変性」と「汎用性」です。要介護高齢者の特性は、加齢や疾病による重度化と要介護状態の多様性です。

要介護状態が重度化しても利用できるもの、右麻痺、左麻痺、筋力低下など様々な要介護状態の高齢者が使いやすいものを選択しなければなりません。それは共用の車いすだけでなく、食堂のテーブル、居室内の共用備品、入浴設備などすべてに当てはまります。

「右麻痺の人には使いやすい手すり」「一般の浴槽で難しくなれば寝たきり専用の特殊浴槽」ではなく、様々な要介護状態の高齢者が安全に利用できる手すりや介護設備、入浴機器を選定しなければなりません。

この視点は、今後介護ロボットや介護機器の進化によって、より重要になっていきます。

運用とメンテナンス

新人教育において福祉機器、介護用品の安全な使い方を徹底するとともに、ケアマネジメントの中で、事故原因になる設備・備品はないか、被害拡大を予防するためにどのような福祉用具が必要になるのかを十分に検討します。また、車いすやべッドなども、「ねじやストッパーの緩みはないか」「手すりのぐらつきはないか」「生活動線に不要な備品が置かれていないか」といった定期的なメンテナンス、チェックも必要です。

このように、建物設備備品をしっかり選定し、適切に利用すれば、大幅に事故の発生、拡大を予防することが可能です。

相談対応

相談対応

利用や入所希望者への相談対応も、介護事故リスクマネジメントの重要な対策の1つです。

身体機能の低下した要介護高齢者が、慣れていない新しい環境で生活をするのですから、「安心・快適」を安易に約束できるわけではありません。本人だけでなく家族に対しても、「できること、できないこと」「事故リスクの可能性と対策」「身体抑制に対する事業者の考え方」などについて、相談時に丁寧に説明しなければなりません。

同時に、その高齢者や家族と信頼関係が構築できるのか、無理難題を言うような家族ではないのか、といった目線で相談を受けることも必要です。「説明を真面目に聞いていない」「見学時に勝手な行励をする」といった高齢者や家族は、利用入所後のトラブルとなるリスクが高くなります。

ケアマネジメント、ケアプラン

ケアマネジメントにおいて、リスクマネジメントの視点は不可欠です。

まずケアカンファレンスは、利用契約、入所契約と同時に行うというのが原則です。訪問介護計画や通所介護計画も同様です。

一部の高齢者住宅では「午前中に病院で退院許可がでれば、午後には入居できる」という乱暴なところがありますが、利用者だけでなく、介護スタッフにとつても非常に危険です。

区分支給限度額方式をとる住宅型有料老人ホームやサ高住であっても、要介護高齢者の入居契約と介護サービス契約は切り離すことのできないものです。適切にアセスメントができなければ、どのような要介護状態の高齢者なのか、どのような事故リスクがあるのか判断できません。

また、高齢者、家族と「サービス提供貴任の範囲」「事故リスクへの予防策」へのコンセンサスが不十分なまま契約、入居となると、事故やクレームの原因となります。

また、ケアマネジメントは、利用時、入所時だけ行えばよいというものではありません。

特に、老人ホームや高齢者住宅への入所、入居は、生活環境ががらりと変わります。事前のアセスメントだけでは不十分なことが多く、新しい生活環境に応じて再アセスメントを行い、早期に適用ケアブランを策定することが必要です。

契約対応

契約時は、ケアプランと一体的に、転倒の予防策や対応策、事業者の責任の範囲なども含め、再度、丁寧な説明が必要です。転倒、急変時の連絡先などについても、確認します。

特に、医癍依存度の高い高齢者、予想できない行動を起こす認知症の高齢者は、事故や急変のリスクが高くなります。「施設内で起こる事故は全て事業者の責任だ」「絶対に転倒させるな」と言われると契約はできません。

事故の予防策の内容やその限界、事業者の實任の範囲について、十分に理解を求めることが必要です。

また、子供や親族が多い場合、家族間で意見や考え方が食い違い、トラブルになることもあります。家族の窓口を一本化することも、リスクマネジメント上、重要なことです。

マニュアルの整備

マニュアル

介護事故のリスクマネジメントの観点から、必ず整備しなければならないのは「安全介護マニュアル」「初期対応マニュアル」「解決対応手順マニュアル」です。

「介護はマニュアル化できない」という言葉をよく聞きますが、マニュアルに従って画一的な介護をしなさいと言っているのではありません。個別ケアを目的として行うのはケアマネジメントであり、安全介護マニュアルは、介護事故を予防するための、共通の手順を示すものです。

例えば「転落、転倒を防ぐための移乗時の確認事項」「入浴前の確認事項」など、共通した手順や決まり事はあるはずです。手順とその理由を明確にし、それを全スタッフに徹底することで、1つひとつの小さな「事故の植」を減らすことができます。

初期対応マニュアルも同じです。「臨機応変に対応する」といっても、常に、経験豊かなべテランの介護スタッフが事故を発見するわけではありません。

また、事故発生時、発見時には気持ちが動転してしまい、平時には当然だと思っている初期対応をとることができません。誤嚥や窒息事故など、事故や急変の発生には責任がなくても、初期対応の遅れが、介護スタッフの過失として問われることもあります。

「日中」「夜間」などの時間帯、また「食事」「入浴」「居室内」などそれぞれの場所で、事故を発見した場合、慌てずに、すべてのスタッフが決められた行動を迅速に行ぅことができるよぅに、マニュアル化する必要があります。

新人教育は、この「安全介護マニュアル」「初期対応マニュアル」に基づいて行います。その一環として、消防署で行われている普通救命講習の受講なども有効な手段の1つです。

その他、利用相談の受付方法や説明内容、聞き取る内容、見学時の注意点などを整理した「相談対応マニュアル」「契約対応マニュアル」、更には、状況の把握、情報の集約一元化、家族や行政への連絡・報告などをまとめた「解決対応マニュアル」も、その内容を事前に検討、整備しておくべきものです。

絶対NG!「忙しいからリスクマネジメント対策ができない」

「忙しいからリスクマネジメントまで手が回らない」という事業者は多いのですが、それは全く逆です。

リスクマネジメントは、現在の仕事にプラスして行うものではなく、現在行っているすべての業務の基礎となるものです。事故やトラブルが見えていれば、実際の業務においても、やるべきことが明確になりますし、盲目的に事故やトラブルを恐れる必要がなく、余裕をもって働くことができます。

リスクマネジメントを蕺礎にサービスを見直すと、「あれ、忘れた」「これができていない」という無駄な動きがなくなり、日々の業務は確実に軽減されるのです。

リスクマネジメントと離職率の関係

平成28年度の介護労働実態調査によれば、介護の仕事をやめた理由の2位は「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(23.3%)」となっています。

この不満には、いろいろな種類があったと思われますが、おそらくリスクマネジメント軽視の姿勢が、介護職員の不安を増長させ、退職を決断させたものと思われます。

一般に介護職は離職率が高いと言われていますが、現実は「事業所によって大きな差がある」のです。リスクマネジメントに優れ、そこで働く人に負荷がかからない配慮がされている優良事業者であれば、離職率は驚くほど低くなっています。

一方、リスクマネジメントができず、介護職員が常にリスクにさらされているような環境の事業所では、離職率が大きく上昇する傾向にあります。そのような事業所では、離職率が30%を超えることも珍しくありませんし、そのような事業所は全体の20%程度は存在しています。

したがって、介護職を続けていく上では、リスクマネジメントができている事業所を選ぶかが重要なポイントとなるでしょう。

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組織として、リスクに対処できていないにも関わらず、事故やトラブルが発生した場合、その結果だけは介護職員に押し付ける事業所があります。

これは介護職を続けるにあたり、最大のリスクかもしれません。なにか問題があれば、個人に責任を負わせるのですから、たまったものではありません。

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