介護業界は情報発信力不足
「人手不足」の代名詞にもなっている介護業界に求められている能力とはなんでしょうか?
給料のアップ?面接技術の向上?
確かにそれも必要でしょう。しかし、もっと大切なことがあります。
それは、介護という仕事の魅力やクリエィティブな面を業界の外へ向けて広く認知させることです。
しかし、大変残念なことに、介護業界は他業界と比較しても宣伝が非常に下手です。
介護施設は、売り上げの多くを介護報酬から得るため、他業界に比べ競争意識が低い傾向にあることが背景にあるのかもしれませんが、とにかく、介護業界全体に共通しているのが、情報発信が上手くできていないということです。
素晴らしい理念を掲げ、人手と財源不足の中でも質の高い介護をしているような施設が、世の中に積極的に情報発信をしないため、その評価は業界内のみにとどまっています。
もっと正しく情報を発信することができれば、話題になり、感謝と尊敬を集めることができ、その結果、就職・転職希望者が集まってくるのです。
現状、介護業界の主な情報発信手段は、施設が発行する広報パンフレットでしょう。
しかし、このパンフレットも施設同士が読む程度の、いわば業界紙的なものであり、外部の人の目に触れる機会はあまり多くありません。
もし、介護施設とは関わりもない一般の人の手に渡ったとしても、そのパンフレットに掲載されているのは、自分に関係のないおじいさんやおばあさんがピースをしているような写真ばかりですから、正直興味を持たれません。
また、写真のクオリティも低く、明らかに素人が撮ったとわかるレベルなので、とても読んでみようとは思わないでしょう。
そもそも、紙媒体の広報物という時点で、もはや時代遅れなのです。
つまり、このような広報パンフレットで、いい人材を採ろうという方が虫が良すぎるのです。
このような古い体質の介護施設は、今後も人材不足から抜け出せない可能性が高いと言えるでしょう。
インターネットの活用で採用を活性化させる
現代において情報を発信するなら、まずはイン夕ーネットを使うのが基本ですが、介護施設はこの点で決定的に遅れています。
イン夕ーネットをまったく使えていない介護施設も多く、施設のホームページすらないところもあります。
仮にホームぺージがあっても、それは相当以前に作られ、デザインは古臭く、訪れる人もいないようなゴーストサイトと化しているようなケースが多く見られます。
これなら逆にない方がいいくらいです。
インターネットの世界は日進月歩なので、常に新たなデザインや表現方法を取り入れる必要があります。
そもそも介護施設のホームページなどによる情報発信は誰に対するものでしょうか。
介護施設のホームぺージを見てくれる入居者の家族は1割以下とされています。
その人達に情報を発信しても無理味に近いのです。
つまり、介護施設のホームページとは、入居者の家族に向けたものではないのです。
では、誰に情報を発信するのかと言えば、それは「外部の人」です。
もっと言えば、これから関係するかもしれない全ての人ということになります。
民間企業では、ブランディングやリクルーティングにホームぺージを活用するのはもはや常識であり、大きな成功を収めている企業もたくさん存在します。
それどころか、そこに企業の命運を懸けていると言ってもいいくらいなのです。
しかし、介護施設には、この視点が欠落しているのです。
もし施設のホームぺージが古く、更新もおざなりになっているような介護施設であれば、それは転職先には適さないと言えるでしょう。
古いホームページのままでは、いつまでたっても若い人材は入ってきません。
なぜなら、現代の若者は、就職情報の収集には、まずインターネットを見ます。
そして、興味のある介護施設のホームぺージを訪れて、どんな施設なのか、また待遇などを知ろうとするからです。
興味を持って訪れたホームぺージがあまりに古臭いデザインで、しかも半年以上も更新されていなかったりすると、それだけで施設に対する印象は悪くなり、興味を失ってしまうのです。
このような介護施設に入ってしまえば、新規採用に苦しむことは必至なので、常に人手不足感に苛まれ、疲弊してしまうことは明らかでしょう。
いい人が採れないから、現場が忙しくなる。
現場は人手不足と多忙感で疲労困憊し、人が辞めてしまう。
余計に忙しくなり、ホームページの更新ができなくなる。
結果、一層いい人が採用できなくなるという悪循環なのです。
介護施設の広報物のレベルをチェック
多くの介護施設は広報物を発行していると思います。
せっかく利用者がいい表情をしていても、カメラマンの腕や写真を載せる紙の質が悪ければ、そのよさはまったく伝わりません。
見た目が古臭く、更新されていないホームぺージ同様、まったく逆効果になってしまうことさえあります。
写真撮影はプロのカメラマンに依頼したり、腕のいいデザィナーにデザィンを依頼したりすることで、情報をより的確に相手に届けることができるようになります。
これにより、相手に興味関心を持たれる確率も相当違ってくるはずです。
しかし、多くの介護施設では、このような単純なことが理解できていないのです。
そのため、広報・PRに注力せず、自己満足の広報物を発行するにとどまっていますが、このような介護施設は転職先にはおすすめできません。
但し、過度なPRをしている介護施設も危険です。
情報を発信する際、噓をついてはいけません。
もちろん、よく見せようとすることは大切なので、「事実を、もっと魅力的に発信するためにできることはなにか」を考える企業努力が大切になります。
このように、正しく、魅力的に情報発信をしようとすれば、費用もそれなりに発生してきます。
しかし、介護や福祉の業界では「お金を使うことは悪いことで、できるだけ使わないのが正しい」という風潮が未だに残っており、広報のような費用対効果の計りづらい取り組み、特に採用広告にお金をかけることを嫌う傾向にあります。
とりわけ特養などは、利用者の定員の数が決まっているため、売上に限界があります。
しかし、人材獲得のために、まずは介護という仕事について知ってもらうということを主題と考えるなら、利益を削ってでも、もっと積極的にプロモーションを行い、介護というクリエィティブな仕事の価値を世の中に発信していく必要があります。
そのためには、広告宣伝費として投資を行い、本気で発信しようとする経営的な判断と実行力が求められるのです。
このような思考を持てず、自分達を魅力的に見せる努力を怠っているような介護施設は、結局、ジリ貧になるので、転職先の候補からは除外するようにしましょう。
しっかり広報・PRを行い、積極的にいい人材を採用する努力をしている介護施設が転職先には向いているのです。
転職する際には、その施設のホームページや広報物をチェックし、ひとつの基準にしてみてください。