ヒヤリハット

ヒヤリハットの報告義務化で介護現場での重大な事故を防ぐ

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ヒヤリハットとは

介護の現場では、大事には至らなかったものの「ヒヤリとした」「ハッとした」ことが頻繁に起こります。

このような事故につながりかねない危険の事例を、介護現場では「ヒヤリハット」(インシデント)と呼びます。

介護は、命や健康に影響を与える仕事です。

大きな事故にならなかったからといって、ヒヤリハットを見過ごしてはいけません。

ヒヤリハットの影にこそ、事故の本質が隠れているのです。

ヒヤリハットの事例

介護の仕事は、常に重大な事故と隣合わせです。

ちょっとした油断がヒヤリハットを招き、それが積もり積もると命に関わる重大事故へとつながるのです。

車いすのブレーキ忘れ

車いすの移動介助の際、利用者が急に立ち上がり、車いすのブレーキが掛かっていなかったために転倒しそうになったという経験をした介護職員は多いのではないでしょうか。車いすの停止位置でブレーキの確認を忘れたことが原因であることが多いようです。

車いす介助時の巻き込み

車いすを前進させようとしたら、利用者の両腕が車いすのタイヤの横に下がっていて、危うく両腕が巻き込まれそうになった。車いすは事故が起こりやすいシチュエーションのひとつです。移動介助を行うことだけに意識が集中しやすいので、注意が必要です。

立ち上がり介助で転倒

自力で立ち上がれない利用者の立ち上りをサポートしようとしたが、サポートする力が弱かったため、よろけて倒れそうになった。本来は「立ち上がりますよ」と声かけをすべきところですが、お互いの意思が統一できていなかったため、転倒の危険が生じてしまった事例です。さらに、靴のひもが緩んでいたり、正しく靴を履いていなかったなど、ちょっとした気の緩みがサポートの妨げになることがあります。

ベッドから転落

オムツ交換の後、通常は元通りに設置するベッド柵をうっかりつけ忘れたことで、利用者がベッドから落ちて転落しそうになっていたケースです。大勢のオムツ交換を一人でやらなければならないという時間的なプレッシャーから、オムツ交換後、ついベッド柵をつけ忘れてしまうことがあります。人手不足が原因のヒヤリハットの一例です。

排泄介助

排泄介護中、別の要件を済まそうと、その場を離れてしまったが、戻ったら利用者が便座から落ちそうになっていた。トイレの介助は油断が生じやすい業務なので、意外に転落事故が発生します。

投薬ミス

薬の管理が煩雑で、他の方の内服薬を誤って飲ませてしまいそうになった。介護施設では、内服薬の管理をスタッフが行うケースが多いですが、多忙であるため、つい確認を怠ってしまうことがあります。薬の誤飲は大きな事故につながりかねませんので、複数回の事前確認が必要ですが、忙しい介護の現場では、慣れや油断、注意散漫などが原因で薬に関するヒヤリ・ハットが起こる可能性があります。

 

事故の原因は些細なこと

最近、介護現場では「利用者情報のセキュリティ管理」について、厳しく指導することが多いようです。

例えば「個人の携帯電話で利用者と連絡をとらない」「会社の携带電話であってもメモリ登録はせず、電話番号は手帳に書く」「その手帳に書いた電話番号は番号表記をずらすなど、個人名と電話番号を一致させない」「利用者デー夕が入ったUSBメモリなどは絶対に家に持ち帰らない」などという細かい規定を設けているケースもあります。

こうしたセキュリティ管理は、秘密保持の実効性を上げるだけではなく、厳しい規定を課すことで、スタッフの「リスク管理」の意識を底上げする目的もあります。

最初は現場から厳しすぎるという反発があるかもしれませんが、実践していく中で、利用者に対する接遇や倫理への意識が高まる傾向にあるというのが現実でしょう。

日々の業務風土を整えていくことが、大きな事故を防ぐ基本となっているのです。

介護現場での使えるハインリッヒの法則

人間の命や健康を守る必要がある介護現場においては「ハインリッヒの法則」がよく取り上げられます。

ハインリッヒの法則とは、アメリカの技師であっったハインリッヒが、労働災害の発生を分析するなかで導き出した法則で、工場の製造ライン運営や航空機の車故防止など、あらゆる現場において基本的な法則として採用されている実績のある経験値で、一件の重大な事故もしくはトラブルの背景には、軽微な事故やヒヤリハットが一定数蓄積しているという法則です。

実際に1件の大きな事故の裏には、29件の軽微な事故、そして300件のヒヤリハットがあるとされています。

つまり「小さなトラブルを放置しておくことが、大きなトラプルにつながる」ということです。

このことからもわかる通り、大きな事故を防ぐのであれば、現場からのヒヤリハッ卜報告などを促す必要があります。

先のセキュリティ規定についても、現場でつい疎かになってしまう細かい点を一つひとつ規制していく中で、重大なリスクの発生を防ごうという意図があるのです。

スタッフの虐待リスクなどを防ぐ上でも同様で、スタッフの何気ない言動をチェックせずに見過ごしてしまうと、それが一定数積み重なったときに、虐待事件などが発生する確率が一気に高まりますので、小さな変化やヒヤリハットに目を光らせる必要があるのです。

 

ヒヤリハット報告の書き方

忙しい介護現場において、バタバタすることもなく、いつも落ち着いて仕事をしている職員は、きっと多くの経験がある人です。

その中には多くのヒヤリハットがあったと思われますが、それを活かしてさまざまな予測ができるようになっているので、多くのことが「想定範囲内」になり、先回りして準備ができるのです。

その個人の経験を個人だけのものにしていては勿体無い。

それなら、ヒヤリハットの経験の報告を義務化させればいいのです。

介護現場のヒヤリハットの事例を介護現場全体で共有すると、起こる可能性がある事故を疑似体験できるようになるので、各自の「予測する力」が磨かれます。

介護現場に潜む様々な危険を予測する力があると、急なことでも驚かずに行動することができます。

また、対処する方法まで把握していると、予め頭の中でシュミレーションしていた範囲内なので慌てず対応ができます。

長年、介護現場で働いている先輩のように経験値がなくても「予測する・想定する」ことで、職員全員が慌てず落ち着いて仕事ができるようになります。

ハインリッヒの法則に従えば、ヒヤリハット報告書を300事例出すことで、29件の軽傷な事故を未然に防ぎ、1件の大きな事故を防ぐことができるのです。

 

ヒヤリハット報告の提出を人事評価に組み込む

介護現場での事故は職員のモチべーションを大きく下げてしまう事柄のひとつです。

大きな事故が起こると、その対処に大きなエネルギーを費やさなければなりません。これは経営的にも大きな痛手になります。

さらに担当者は強く責任を強く感じ、その後の業務が消極的になる傾向にあります。

これでは人材が育成しづらくなるばかりか、職員の退職にもつながってしまいます。

事故を防ぐための基本は「重大事故に至らない裾野部分」を丁寧につぶしていくことです。

つまり、ヒヤリハットを共有し、組織全体で事故の芽を摘むことが重要になるのです。

ヒヤリハットの記録

ここで問題になるのは、ヒヤリハットや軽微な事故の記録がなかなか上がってこないことです。

ほかの記録と同様で「書くのが面倒」といい動機もさることながら、「それがヒヤリハットに当たるとは気づかなかった」というケースも見られます。

これではヒヤリハットを共有することができず、せっかくの経験を組織として活用することができなくなります。

 

ヒヤリハットの基準を明確にする

管理職からの相談に「現場スタッフがヒヤリハット報告を上げてくれない」というものがあります。

これはスタッフが悪いのではなく、管理職側がヒヤリハットの基準を明確にしていないとが原因です。

必要になるのは「何がヒヤリハットに当たるのかを事例を交えガイドラインで示す」「ヒヤリハット報告は日常のケアの向上にも必要であることを理解させる」の2点です。

その上で、ヒヤリハット報告の提出を人事評価に組み込む方策を考えます。

ある施設では、ヒヤリハットのガイドライン作成委員会を設けました。

どんなときに「ひやり」としたり「はっと」するかということ検討します。

それは「自分が予測したり、安心だと判断したこと」とはズレた状況が発生したときでしょう。

この場合、予測や判断の根拠は、事前にもたらされるアセスメン卜情報などです。

つまり、この事前情報との照らし合わせがポイントなのです。

 

ヒヤリハット報告を人事評価に反映させる

前提として、組織内でもたらされる情報をきちんと共有させることです。

これにより、当事者意識が芽生えます。

とにかく、予測や判断できない状況が生じたら、すべて「ヒヤリハット」として報告させます。

自分の油断などから「ひやり」としたり、「はっと」することもあるでしょう。

これも「自分の落度が発生する」というリスクがアセスメントできていないことから生じています。

アセスメントというのは、利用者側だけでなく、自己管理アセスメントも必要であり、このことを、ヒヤリハット報告を通じて理解させることが、大きな事故を防ぐ力になっていくわけです。

報告書を評価の対象にする

ヒヤリハット報告がきちんと書けないことは、事前情報の理解が甘いという点で評価を下げる対象になってくるという点も周知させましょう。

管理職としては、現場把握の段階で、ヒヤリハット発生の可能性をある程度見極めておき、あまりに報告が少ないスタッフに対しては、面談でリスクアセスメントの把握状況をチェックし、その結果を人事評価に反映させるという流れでもっていくとよいでしょう。

自己管理アセスメン卜も評価対象にする

自己管理の能力も重要になります。

例えば、その日の自分自身の体調はどうなのか、集中力が低下している様子はないかということを、自らが振り返ることを習慣づけることも評価基準にすれば、仕事への責任感も生まれるでしょう。

リスクは利用者サイドだけでなく、サービス提供者のなかにもあることを意識させることが重要なのです。

 

危機回避には常に介護現場の状況をチェックすること

重大な事故を回避するためには、施設長や管理職が自ら現場を巡回した方がいいでしょう。

スタッフが日勤、遅番、夜勤の3交代制になっているのであれば、シフト毎の3回のラウンドによってすベての勤務時間帯の状況を把握します。

もちろん、施設長や管理職が巡回すれば、スタッフが意識的に普段の言動を覆い隠すかもしれませんが、ハインリッヒの法則に従えば、たとえ「施設長がいるから自重する」という動機でも、一定のリスク管理の効果は生まれます。

同時に、スタッフだけでなく、利用者の状況にも目を配るようにすると、よりよい環境を作ることができるはずです。

特に認知症利用者の場合、常に不安感を抱えがちで、スタッフによるちよっとした厳しい口調などが心理的に大きな落ち込みを呼ぶことがあります。

そうした状態をチェックしていく中で、スタッフの言動に異常は見られなくても、利用者側が大きく落ち込んでいたりしたすることがあります。

例えば「なぜあの人は落ち込んでいるのか」についてスタッフにヒアリングを行い、身体状況や日常の生活などに課題が見当たらない埸合は、スタッフの言動が原因になっている可能性があります。

このような小さなことが重大な事故につながる可能性があるので、その場合、そのスタッフを正しく教育し、意識を改めさせる必要があります。

このような日々の確認や改善により、大きな事故を防ぐ体制を作っていくのです。

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