グループホームとは
グループホームとは、認知症で介護を必要とするお年寄りが、入浴、排せつ、食事、その他の日常生活の援助を受けながら、共同で生活を送る施設のことです。
地域密着型サービスのひとつで、原則として、設置されている自治体に住民票がある人が入所対象になります。
認知症とは、脳の器質的な障害によって正常に発達した知能が持続的に低下した状態になることを指し、症状として、日時や場所、人などがわからなくなったり、直前の出来事などの記憶が失われることがあります。
さらに、感情が不安定になったり、幻視や幻聴などがみられることもあるため、一人暮らしは困難になってきます。
症状にもよりますが、少しの援助や助言があれば、家事や身の回りのことを自分でできる人は多いので、一概に認知症扱いをすることは正しい対応とはいえません。
認知症専門施設
グループホームと特別養護老人ホームの大きな違いは「入居しているお年寄りが認知症と診断されているか」です。
認知症と診断されていれば、グループホームの入居条件を満たすことになります。
グルーブホームに入居されているのは、要支援2から要介護5の認知症のお年寄りです。
また、グルーブホームでは、10人弱の少人数で生活しており、それぞれに個室があり、共同のリビングやキッチン、浴室などが備え付けられます。
個室には、これまで自宅で使っていた夕ンスや布団などを持ち込むことができ、環境変化を軽減するような工夫がされています。
認知症のお年寄りにとって、生活しやすい環境を整え、少人数のなかで馴染みの関係をつくることは、とても重要です。
このような家庭的な雰囲気の中で、掃除や洗濯、調理を一緒に行ないます。
グループホームの生活では、落ち着いた生活、自分らしい生活を送ることにより、認知症の進行を遅らせることや残された能力を最大限に活用することが望まれています。
地域密着型サービスと近隣住民との関係
高齢になっても、これまでのように、自分らしく生きていきたいと考える人は多いことでしょう。
住み慣れた場所で、馴染みの人たちといつまでも暮らしていきたいのは当然の欲求です。
お年寄りができる限り住み慣れた地域での生活を継続するための「地域密着型サービス」があります。
地域密着型サービスには、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グル一プホーム)、小規模(定員29人以下)の介護老人福祉施設、小規模(定員29人以下)の特定施設入居者生活介護があります。
グループホームは、その中のひとつに位置づけられており、原則として、当該自治体住んでいる住民を対象としています。
地域に密着した活動
地域密着型サービスは、住宅地などに建設され、地域に根付いた活動を期待されています。
利用しているお年寄りだけではなく、近隣の住民を対象とした催しなども積極的に行なわれています。
介護保険の認定を受けていない高齢者の介護予防教室、集まった人と話ができるサロン、介護保険や認知症の勉強会、また異世代交流として子どもとお年寄りが参加するレクリエーションなど、さまざまな行事が開催されています。
また、特別養護老人ホームやグループホームなどの施設では、地域で活動しているボランティアの協力を受けてます。
歌や楽器演奏などで余暇を楽しむ音楽ボランティアがそのひとつです。
お年寄りと1対1でゆっくりと向き合って話をする傾聴ボランティア、行事の手伝いをする学生ボランティアなどもあり、これら取り組みにはたくさんの人が関わっています。
お年寄りが住み慣れた地域で生活を継続できることは、若い年代の人にとっても安心できるはずです。
地域住民、自治体、そして施設が協力することで、お年寄りのこれまで通りの生活を支えていけるのです。
グループホームで働く介護士の仕事
グループホームの介護士も24時間365日、入居しているお年寄りの生活を支えています。
グループホームに入居しているお年寄りは認知症のため、いろいろな生活上の支障があります。
具体的には、洗濯機の使い方を忘れてしまうといった簡素なものから、洋服を着る順番がわからなくなってしまったり、外出先から家に帰れなくなってしまうなど、発生する問題は人それぞれで異なります。
しかし、多くの認知症のお年寄りは、ちょっとした声かけをしてあげたり、介護士が一緒にサポートすることで、支障を克服できるのです。
能力を引き出す
多くのグループホームでは、介護土と入居しているお年寄りが近くのスーパーや商店街に一緒に食材を買いに行き、一緒に食事をつくって、一緒に食べます。
また、掃除や洗濯もそれぞれ協力しながら行ないます。
このような生活におけるすべての行為が、お年寄りの楽しみにつながっており、同時にリハビリにもなっているのです。
そのため、オムツ交換や入浴介助といった直接的な介護だけではなく、家事などを通してお年寄りの状態を把握し、その人のできることを増やすこと、即ち、能力を引き出してあげることがなにより求められるのです。
グループホームでは、少人数の認知症のお年寄りが共同生活をしているため、家庭のような雰囲気のなかで、その人らしい生活を継続することが、認知症の進行を緩やかにさせるといわれています。
主婦として毎日の食事をつくり、洗濯や掃除を行なってきたお年寄りの中には、認知症のため、過去の記憶は忘れてしまっていても、台所に立てば野菜を切り、ごはんを炊くこともできる人がいます。
このような習慣は決して忘れていないのです。
この事例からもわかる通り、介護土は、その人のもっている力を引き出す介護が求められるのです。
グループホームと医療の連携
グループホームでは、認知症のお年寄りと介護士が家庭的な雰囲気の中で、自宅に近い生活を継続できるように協力して暮らしています。
高齢になると、認知症以外にも癌や高血圧、糖尿病、脳梗塞の後遺症など、さまざまな病気を抱えている人がいます。
そのため、入居しているお年寄りは、かかりつけの病院を受診したり、医師に往診してもらうなど、定期的に治療や検査を行ない、必要な薬をもらいます。
そして、近年では、グループホームに入居されているお年寄りの介護が重度化してきており、終の棲家としてグループホームで死を迎える人も増えてきましたが、グループホームには、看護師の配置は義務づけられていません。
そこで、グループホームでの生活が安心して継続できるように、訪問看護のサービスを受けることができるようになりました。
市町村によって、回数や時問に違いはありますが、看護師が定期的にグループホームを訪問し、入所しているお年寄りの健康管理(相談)や医療的な処置などを行ないます。
また、入所しているお年寄りのかかりつけの医師との連絡調整の役割も担っています。
緊急時は24時間いつでも電話での連絡が可能で、体調が優れない場合は、常時相談できる体制になっているのです。
介護士の能力が問われる
看護師がいないグループホームにおいては、お年寄りの体調が急変した場合など、介護士に高度な判断が求められる機会が少なくありません。
そのような事態に備え、看護師と介護士が一緒に研修を行ない、情報や知識を共有する機会も設けられています。
日々の生活をともにしている介護土のちょっとした気づきが、お年寄りの健康管理にとつて重要なのです。