現代の日本で最も必要とされている職業は「介護職」と言ってもいいでしょう。
高齢化が進む日本において、介護職(介護福祉士など)は、ますます貴重な職業になります。
介護職の給料と年収
社会的意義のある介護職ですが、残念ながら待遇が仕事内容に見合ってるとは言いがたいでしょう。
介護士は自分を犠牲にして、多くの人に奉仕しているのも関わらず、お給料や休日などの待遇面で決して恵まれてるとは言えない状況にあります。
厚生労働省公表の統計データでは、介護職の給料は、全国平均で21万9700円、訪問介護員は若干高く、22万700円になっています。
全産業平均が32万9600円なので、およそ11万円も低くなっており、介護職の待遇の悪さが浮き彫りになっています。
介護職は典型的な労働集約型産業なので、主たるコストは人件費です。
施設介護では介護報酬の約70%、訪問介護ではおよそ90%が人件費に充当されているので、現状でもかなりギリギリの経営状態かもしれません。
つまり、これ以上人件費を上げられないビジネスの構造なのです。
もし、介護職の給料を全産業並に引き上げるとすると、1兆円以上の予算が必要になると言われています。
その財源は「税金」です。
厳しい国家財政を考えた場合、これは実現不可能なプランと言わざるを得ないでしょう。

介護士の辞めたい(離職)理由
介護職の離職率
離職率が高く、離職者が多い点も介護職の特徴のひとつです。
そして、潜在的な離職希望者(辞めたい予備軍)が多いのも介護職の現実です。
介護福祉士やヘルパーを含む、介護職として就職してから3年で約半数の人が離職または転職をしています。
一般企業の場合、3年以内に辞める人が30%なので、介護職を辞める人の多さが際立っています。
辞めたい新人が急増
特筆すべきは、新人の退職率の高さ。
ひどい場合には1日で退職してしまうケースがあるくらいです。
夢を持って介護業界に飛び込んできたにも関わらず、現実と理想が違いすぎるのです。
新しい環境に慣れていないのに、どんどん仕事を任され、肉体的にも精神的にも負荷が大きくなる。
先輩や上司、入居者やその家族など、複雑な人間関係に疲弊する。
こうして新人は燃え尽きてしまうのです。
介護職は条件が悪い?
社会的な需要も高く、多くの人から感謝されるとても大切な仕事であるにも関わらず、介護士を辞めて、福祉業界を離れてしまうのは非常にもったいない。
介護士の離職は社会的損失です。
そして、ただでさえ慢性的な人員不足が続いている介護の現場が、より一層回らなくなってしまえば、入居者やその家族にとっても不安でしょう。
社会制度が未整備であり、人手も少なく労働環境も厳しい中で、人材教育が行き届いておらず、それによって多くの人が辞めてしまっている現実は改善の必要があります。
実際、現役の介護職員に介護の仕事の悩み・不安・不満を調査したところ、以下のような結果になりました。
大別すると、多くの介護士は、「労働条件」「賃金」「健康(心身)」に悩み・不安・不満を持っているとわかります。
悩み・不安・不満 (複数回答) | 割合 |
人手が足りない | 45.0% |
仕事内容のわりに 賃金・収入が低い | 43.6% |
有給休暇が取りにくい | 34.5% |
身体的負担が大きい (腰痛や体力に不安がある) | 31.3% |
精神的にきつい | 28.5% |
社会的評価が低い | 28.2% |
休憩が取りにくい | 26.8% |
夜間や深夜時間帯に何か 起きるのではないかと不安 | 21.0% |
健康面(感染症、怪我)の不安 | 14.3% |
労働時間が不規則である | 13.4% |
福祉機器の不足、機器操作の 不慣れ、施設の構造に不安 | 11.8% |
労働時間が長い | 10.8% |
不払い残業がある・多い | 9.2% |
医的な行為に不安 | 8.9% |
雇用が不安定である | 7.6% |
仕事中の怪我などへの補償がない | 5.9% |
正規職員になれない | 5.1% |
その他 | 3.5% |
特に悩み、不安・不満等は感じていない | 9.2% |
さらに、介護の仕事を辞めた理由も調査しています。
実際に辞めた理由は、悩み・不安・不満よりも、もっと具体的で、直接的な問題であったと見て取れます。
介護の仕事をやめた理由(複数回答) | 割合 |
職場の人間関係に問題があった | 24.7% |
法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった | 23.3% |
他によい仕事・職場があった | 18.6% |
収入が少なかった | 17.6% |
自分の将来の見込みが立たなかった | 15.1% |
新しい資格を取ったから | 10.1% |
結婚・妊娠出産・育児のため | 9.1% |
多くの介護士が辞めたいと思う具体的な理由は何なのでしょうか。
主な意見は、以下の通りです。
■慢性的な人手不足による多忙感により辞めたい
■夜勤が多く、体調不良からうつ状態になってしまって辞めたい
■腰痛がひどく、体力的に辛くなり、続けられずに辞めたい
■研修がなく、特に新人が育たないために既存職員まで辞めたい
■放任主義でわからない業務を押し付けられるため、人間関係が嫌になり辞めたい
■給与・収入や休日などの条件が年々悪くなり、キャリアビジョンを描けず辞めたい
■事前の説明と違い、思っていたイメージとの開きがあったために辞めたい
■尊敬できる上司がいないし、人間関係が悪く、自分の将来が不安になって辞めたい
■明確なキャリアビジョンが描けず、将来性を感じられずに辞めたい
■仕事が多忙で、周囲とのコミュニケーションが取れず人間関係に辛くなって辞めたい
■利用者のわがままなど、入居者との人間関係に耐えきれずに辞めたい
■小さな事故を体験し、怖くなって、プレッシャーに負けて辞めたい
■夜勤で利用者30人を担当しなければならず、多忙感で辞めたい
■周りからの新人へのフォローがないため、新卒1年未満で辞めたい
■男性職員への負荷が大きく、心身両面での重圧に耐えられず辞めたい
■パートや派遣社員への差別的な待遇(収入面を含む)に不満を持ち、辞めたい
■いろいろなストレスが限界に達し、精神的に疲弊し、鬱になって辞めたい

介護職の辞めるタイミングと転職
介護士の大量離職が発生している介護施設であれば、なんらかの対応を考えた方がいいかもしれません。
「自分の働いている介護施設はブラック企業なんじゃないか・・・」との不安があれば、転職を含めた、いくつかの選択肢を検討すべきです。
サービス残業常態化、各種手当が払われない
30分未満の残業時間は切り捨てるのが暗黙のルール。
一旦、タイムカードを押させて、その後に残業させる。
持ち帰りの仕事を指示する。
このような業務指示はすべて違法です。
また、定められている夜勤手当が支払われない場合や有給休暇を取得させてくれない場合も労働者の権利を侵害しています。
このような収入面での不満は早めに解消しましょう。
勤務時間外(休日)に連絡、対応を要求
勤務時間外に職場から頻繁に連絡がきて、無理矢理に対応を求められる職場は危険な兆候です。
人手不足やコミュニケーション不足とはいえ、勤務時間外の労働者への業務連絡は、労働基準法で禁じられています。
休日も仕事のことを考えなければいけない環境は気が休まらず、ストレスが蓄積されていくでしょう。
介護現場の事故責任を個人に
ヒヤリハットを報告した際、再発の防止ではなく、犯人探しが始まってしまう施設があります。
また、それが個人攻撃に発展していってしまうと最悪です。
そのような介護施設では、自分が責められるのではないかと疑心暗鬼になり、ヒヤリハットを報告できず、それが次の重大事故の種になってしまう場合があります。
特に新人は責任を押し付けられやすいので危険です。
事故報告の目的はあくまで情報の共有であり、未来の重大事故の防止です。
この点を正しく理解している上司がいる職場で働ければ安心できます。
パワハラやセクハラ、イジメが横行
近年、介護職員から入居者への暴力や暴言が問題になっています。
また、逆に入居者から介護職員へのセクハラや暴力・暴言も問題視されています。
さらには介護職員間のセクハラやパワハラも横行しています。
これらの問題行為が常態化しているようであれば、楽しく働ける職場とは言えないでしょう。
無駄なストレスを抱えるくらいなら、もっと生き生きと働ける環境を探すべきです。
経営者の運営方針が納得できない
経営者が、利益最優先の方針で施設経営をしているケースがあります。
介護優先ではなく、まずは利益ありきなのです。
そのしわ寄せは当然現場に来ます。
介護もビジネスなのかもしれませんが、少なくとも現場の声に耳を傾け、同じ目線で施設運営をしてくれる経営者の元であれば、やり甲斐を感じるはずです。
医師や看護師などとの人間関係が悪く、連携悪化
女性の人間関係は複雑です。
看護師が介護職を見下した態度を取ったり、汚い仕事や雑用は介護職に押し付けるなど、自然に上下関係が構築されてしまっているケースがあるようです。
このように職場にヒエラルキーができてしまうのは危険です。
業務に追われながら、不毛な人間関係に我慢していると、心身ともに疲弊し、燃え尽きてしまう場合があります。
人手不足のために無資格者に医療行為
これは言語道断の違法行為です。
2012年以降、一部の医療行為は、必要な講習を受講した介護職員に限り対応可能となりましたが、人手不足・業務多忙などを理由に、違法行為を奨励している介護施設もあるようです。
そのために介護士が書類送検された事例もありますし、利用者の安全や利益に反する行為なので、モラルが欠如している職場で働くのはおすすめできません。

介護職の求人
介護職は常に人手不足なので、転職が容易な職業です。
実際、全ての職業の有効求人倍率が1倍を下回っている状況でも、介護職は2倍前後で推移しています。
つまり、介護業界は、転職に最適な状態にあるのです。
とは言え、自分に合った介護士の求人はどこからどう探していけばよいのでしょうか。
求人を探す上で大切なのは「探すルート」です。
どこで探すかによって求人内容も変わってくるので、まずはその調べ方が重要です。
求人の特徴
介護士求人は、ハローワークや折り込みチラシなどが一般的ですが、最近は介護士専門の求人サイトがあるなど、探し方が多様化しています。
求人を出す側(介護施設等)はその媒体の特性を十分に理解した上で求人を出しているので、まずはそれぞれの特性を知っておく必要があります。
地域密着の求人を探すなら
ハローワーク(公共職業安定所)
無料掲載できるので、求人数は多いものの、それだけに「ブラック企業」の求人が混在しているので、注意が必要です。
インターネットでの検索も可能なので、自宅からでも簡単に求人を探せます。
国が運営しているので、失業給付、就職促進給付など、情報の信頼性は高いと思います。
求人情報雑誌(フリーペーパー)、折込チラシ
近所の商店などに設置してあり、無料で貰えます。
また、自宅にポスティングされるケースもあると思います。
元々エリアを限定しているため、数キロ圏内の求人情報だけが載せられているので、求人数は限定されますが、ピンポイントで求人が探せるメリットがあります。
沢山の選択肢が欲しいなら
求人サイト
専門の転職支援会社が、インターネットで圧倒的な求人数を提供しています。
求人情報だけではなく、業界動向やの転職成功のポイントなどを指南してくれています。
完全無料で使えるので、リスクはなく、とても便利です。
人材紹介会社および人材派遣会社
人材紹介会社や人材派遣会社はインターネット上で公開されていない非公開求人を多く持っています。
そのために、なかなか巡り会えない本当に条件の良い求人を紹介してもらえる場合があります。
これも完全無料で使えます。
実際に働いている人と話する
転職フェア・転職合同説明会
人材紹介会社や人材派遣会社、または各種関係団体が主催する転職・就職フェアなどがあります。
ここに出展しているブースでは、実際の職員や経営者と直接話せるので、リアルな情報を手にできるでしょう。
友人や知人の紹介
実際に働いている人の紹介で職場を決める手もあります。
リアルで確度の高い情報が手にできるので、転職失敗のリスクを低減できるでしょう。
募集要項の注意点
興味を持った介護求人から確認すべき点は以下の通りです。
基本事項
募集職種や雇用形態はもちろん、書かれている仕事内容から実際の業務をイメージして、自分の希望に合っていることを確認してください。
中には応募資格が設定してある場合があるので、自分が持つ資格との比較を忘れないでください。
注意事項
「3交代制あり」など勤務形態だけが記載されており、具体的な勤務時間(シフト)が無記載の場合があります。
また、「夜勤あり」と記載されているだけで、勤務回数が記載されていないケースがあります。
自身のライフスタイルと比較し、本当に勤務できるかを検討する必要があります。
教育制度
人員不足のため教育体制が未整備となっている事業所があります。
この場合、初心者にとっては厳しい勤務となり、すぐに退職に追い込まれてしまう可能性があります。
求人を探す時のポイント
■施設規模に対して採用人数が多すぎないか
■絶えず募集していないか
■他施設と比較し、給与は平均的か
■年間休日数
面接時のチェックポイント
■職員間のコミュニケーション
■施設内の清潔感(汚物臭など)
■経営者や管理職(施設長やリーダー)の人間性
■施設全体の雰囲気
ブラック介護施設かも!?危険なポイント
■いつ見ても求人が出ている
■異常に給与が高い
■殺伐としており、スタッフ間の挨拶や笑顔が少ない
■即日内定が出て、翌日からの出社を求められる
■経験者を優遇しない
■有給休暇が取得できない
■サービス残業が当たり前
■利用者からの暴力やセクハラが常態化
■当日欠勤を認めない

介護現場での具体的な悩み
介護転職Q&A






・経営者、管理職が自分の話を聞いてくれない
・現場の意見も聞かず、勝手になんでも決めて無理な事でも仕事だからと命令される
・人が辞めてシフトがキツくなってもねぎらいの言葉もない
・トップダウンで言いたいことも言えない
・前向きな意見や新たな取り組みはいつも却下されて、意見を出す気力もなくなった
・上司が指示を出すだけでリーダーの自覚がなく、現場の現状を理解しようとしない
・問題のある管理職の経営者が放置している
・介護職員を大事にせず、単なる使用人として扱う経営者を信用できない
・責任と義務ばかり要求されるが、権限を与えられない
・経営陣同士の仲が悪く、会社全体が暗い
・パワハラやセクハラが暗黙の了解で放置されている
・会社に発展性や将来性を感じない


















介護転職のまとめ
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